廣瀬 美由紀さん
(とらねこ文庫 代表)

ひろせ みゆきとらねこ文庫 代表

ジャンル 子育て・福祉教育・文化・芸術

職種

活動のエリア 長崎市

プロフィール

廣瀬美由紀さん

 1987年、夫の仕事で移り住んだマニラで、日本人の家で定期的に開かれていた文庫に出会いました。
 日本語の絵本や子どもの本を多数そろえた図書室のような場所で、貸し出しもしていました。
 そこで本好きの仲間と出会い、絵本や子どもの本の面白さを再確認し、昔話などのお話を語る楽しさも知りました。
 帰国して数年後、金沢市に引っ越して再び家庭文庫に通うようになりました。
 石川県は文庫活動が盛んで、多くの仲間と交流をし、子どもの本の学びを深めることができました。

ブックトーク

 次男が1歳になった1999年10月、狭いアパートの一室でとらねこ文庫をオープンしました。乳幼児連れでも気兼ねなく本に親しむ場所を作りたかったのです。
 2001年4月には宮崎市へ、2012年4月には長崎市へ転居。ずっと文庫は続けました。現在は自宅ではなく、ルーテル教会を借りて開いています。
 文庫の柱は、絵本を読みあう毎週1回の絵本の時間です。子ども連れの人も大人だけで来る人もいます。順番に読むだけですが、読んでもらいながら絵をじっくり見ると絵本を隅々まで味わうことができます。
 大人になって読む絵本は、それぞれの人生経験が反映され受けとめ方も一人一人違います。違う思いの人が集まっているから面白い。皆がそう思えるようになったのは、多様性を認める何冊もの絵本に出会ったからです。
 大人であっても、絵本から学ぶことはたくさんあります。
 絵本を読みあう中で、柔らかな心と豊かな感性が養われています。

 その他にも、勉強会を開いて絵本や子どもの本についての学びを深め、お話を語る人たちを育てています。
 最近では、ゆめ基金以外の助成金も申請しています。申請書の作成から企画の運営、報告書の作成まで大変なこともありますが、活動の幅を広げるためにはどうしても必要です。
 活動資金を獲得することは大きな課題です。

おひざで絵本

 2017年5月から、とらねこ文庫の「おひざで絵本」(乳幼児と保護者向けの絵本とわらべうたの会)を始めました。
 子育てに絵本とわらべうたを取り入れることで、子育てが少し楽になります。親子の親密な関係が築きやすくなります。
 まずは絵本とわらべうたの楽しさを体験してもらいたくて、毎月2回開いています。
 乳幼児期に本の楽しさ、読んでもらう心地よさを知った子どもは、成長しても本を読むようになるでしょう。
 親子で絵本を読んだ幸せな記憶は、子どもと親を生涯支えてくれます。
 また、子育て中の人たちがホッとできる場としても、参加者同士、幅広い年代のスタッフと参加者の交流の場としても「おひざで絵本」は役立っています。
 今後、会場や回数を増やして、多くの人に参加してもらえたらと願っています。

 この他にも、子どもゆめ基金(子どもの読書活動推進のための国の助成金)を活用して、毎年様々な企画を行っています。
 絵本作家の絵本ライブや講演会、科学遊びや自然観察会など、子どもと本をつなぐための活動、子どもの読書を応援する大人のための活動など、多岐にわたっています。

科学あそび

 もともと、個人の活動として始めた家庭文庫「とらねこ文庫」です。毎週の文庫活動を中心に、地道に続けてきました。
 長崎が3か所目になりますが、初めての土地で文庫を根付かせていくのは、容易なことではありません。
 でも、文庫をしているおかげで人と出会い、新たなつながりを作ることができます。
 活動に主体的にかかわる人たちも増えて、個人の文庫ではなく、みんなのとらねこ文庫になってきていることを嬉しく思っています。
 地域に開かれた文庫として、これからも活動を続けていきます。
 「活動の原動力は何ですか?」と聞かれることがあります。
 その答えは「私自身が本に支えられて生きてきたから。」救われてきたと言ってもいいかもしれません。
 苦しいとき、悲しいとき、直面している現実を離れて、本の世界に入り込み、解放されて、気持ちを立て直してきました。
 本は、世界への窓にもなります。小さい頃から、本を読んでは想像を膨らませてきました。
 本は、時間も空間も超えて、違う世界へ連れて行ってくれます。
 自分の生きている狭い範囲だけでなく、世界各地で暮らしている人に思いを馳せたり、現在過去未来と、時空を超えて旅をすることもできます。

 本を読むことでどれだけ世界が広がることか、子どもだけでなく大人にも本を読む醍醐味を知ってほしいと願っています。

(更新 平成30年5月)

ライフヒストリー

27歳 マニラで初めて文庫と出会う
31歳 金沢市で文庫に通う
39歳 とらねこ文庫を始める
52歳 長崎市で文庫活動を継続

Q. プライベート(休日)の過ごし方は?

休日も依頼された講演の準備や文庫の企画の準備などに追われて、なかなかのんびりはできません。
そんな中でも、できるだけ他の団体が企画する講演会などに出かけて視野を広げることを心がけています。
休日でなくても本は読んでいるのですが、映画は休日に見ています。
映画も本と同様に世界への窓になるので、外国の映画をよく見ます。
休日に限りませんが、愛犬との散歩で自然を感じて歩くのがよい気分転換になっています。

Q. 座右の銘(好きな言葉)は?
理由などあれば合わせて教えてください。

【子どもたちよ 子ども時代をしっかりとたのしんでください。
 おとなになってから 老人になってから あなたを支えてくれるのは 子ども時代の「あなた」です。】 

1907年に生まれ、101歳で旅立った石井桃子さんの言葉です。
絵本や児童文学の創作、海外の絵本や児童文学の翻訳に携わり、日本の児童文学の基礎を築いた人です。
私が幼い頃に大好きだった「岩波子どもの本」のシリーズの編集者でもありました。
子どものためのたのしい図書室を作りたいと、1958年に「かつら文庫」を開いて子どもと本をつなぐ活動もされていました。
石井桃子さんのこの言葉には、心から共感を覚えます。

Q. これからしたいこと(今後の目標)は?

子どもたちと一緒に絵本を読み、昔話や創作などのお話を語り、「面白かった~楽しかった~」と言ってもらえた時にやっていてよかったと思います。
特に子どもたちの目を見ながらの語りは、子どもの聞く力、想像する力を育てるので、一人でも多くの子どもに聞いてほしいと願っています。
そのために自分も語り手として成長するとともに、語り手の養成にも力を入れたいと考えています。