門 更月さん
(Moshyw)

かど さつきMoshyw(モッシュ) 事務局長

ジャンル NPO・ボランティア

職種

活動のエリア 長崎市

プロフィール

門 更月さん

「私は長崎が大好きでした。仕事もずっと長崎で続けたかった。でももう長崎にはいられなくなりました。悔しくてたまりません。」
 10年ほど前セクハラ事件の被害者の女性が知り合いだったこともあり、苦しい胸の内を私に打ち明けてくれました。彼女はその直後県外に行ってしまいましたが、なぜ加害者でなく被害者が泣く泣く仕事をやめて、長崎を離れなければならないのか。罰を受けるのは加害者のはずなのに。その不条理に憤りました。希望に燃えて仕事を頑張っていた彼女のことが忘れられず、さらに同じようなセクハラ事件が長崎で続いて起こったこともあり、同じ思いを持つ仲間たちと2008年Moshywモッシュ(もうセクハラを許さない女たちの会・ながさき)を立ち上げ、その事務局長となりました。(現在の会員19人)

 セクハラは人権侵害です。被害を受けた女性は心身を傷つけられ、深い絶望感のもと自己実現や働く権利を阻害されます。現在、社会問題であるとの認識が進み、男女雇用機会均等法の整備などにより対策が推進される一方で、実際にはセクハラ事件は後を絶たず、長崎でも繰り返し起こっています。さらに「なぜ嫌と言わなかったのか。隙があったのではないか。される方にも非があったのではないか」など被害者に対する2次被害も深刻です。モッシュは、まず被害者に対して「あなたは悪くない」という共感のメッセージを伝えることを大切にしています。そして、被害者の怒り、屈辱、悲しみ、痛みに寄り添いながら、心身の自己回復を支援することを活動の柱としてきました。そのために被害者ホットラインを開設して相談に乗ったり、直接会って話を聞いたり、時には弁護士を紹介したり、病院や裁判に付き添ったりしました。

アマランスフェスタ市民企画講座

 また、モッシュは、セクハラは人権侵害であり深刻な被害をもたらすことを社会に訴え、女性が安心して活躍できるような環境をつくるための啓発活動として、講師を招いての講演会を開催したり、大学・高校でのセクハラ研修を実施してきました。セクハラ研修の内容はすべてゼロからの手作りで、パワーポイントのイラストも会の趣旨に賛同してくれた絵の上手な知人が描いてくれました。
 さらに、アマランス・フェスタでは毎年セクハラに関連するテーマを設定して、市民企画講座を実施してきました。今までのおもなテーマとしては、「介護の現場のセクハラについて」「高齢者のセクハラ・ストーカー問題について」「対馬市議会セクハラ事件を考える」「男性保育士の女性対応yes or no?」などがありますが、いつも10名前後の参加者が活発に議論しています。

バザー

 現在モッシュが特に力を入れて取り組んでいるのは、スクール・セクハラ防止です。2012年モッシュは長崎市内小学校の男性教諭による女子児童に対するセクハラ行為に対して、長崎市長、市教育長あてに再発防止のための施策を要望しました。長崎に限らず近年学校内外で子どもに対するセクハラ事件が起こっています。被害にあった子どもたちの多くがPTSDに苦しみ、心身の成長に大きな悪影響を与えると言われています。2015年被害にあった子どもたちが1人で悩まないで周りの大人に相談してほしいと訴えるリーフレットを作成しました。そのリーフレットを長崎市内のすべての中学生に配布したいと考えています。また、教職員が加害者にならないように、教職員を対象としたスクール・セクハラ研修を現在検討中です。

 モッシュの活動を始めて10年。1番の苦労は資金集めです。会員も少数の小さな団体なので、講演会をするにしても、リーフレットなどを印刷するにしても必要な資金がいつも足りません。県・市や民間の支援事業に応募したり、寄付を募ったりしていますが、なかなか資金不足は解消できていません。
 しかし、相談者から「このような話はなかなか人に話せないし、たとえ話しても自分が悪いような対応をされる。話を聞いてもらって本当に嬉しかった」と言われると、活動を続けて良かったと思うし、セクハラ事件・発言に対してモッシュが抗議したことが報道され、見知らぬ人から「応援してますよ」と声をかけられたりすると、また頑張ろうと思ったりします。
 冒頭の被害者のように、女性がセクハラによって二度と悔し涙を流さないような社会を、長崎をつくるために、私はモッシュのメンバーとしてこれからも活動していきます!


(更新 平成30年1月)

ライフヒストリー

46歳 職場(高校)でセクハラ相談員となる
54歳 Moshywモッシュ(もうセクハラを許さない女たちの会・ながさき)を仲間と共に設立して、その事務局長となる
    職場で職員・生徒を対象にセクハラ研修を行う(以後60歳まで毎年実施)
61歳 定年退職後、高校生に対してセクハラ研修を行う(以後現在まで毎年実施)
62歳 モッシュが加盟する「ながさき女性・団体ネットワーク」(事務局は長崎市人権男女共同参画室)の会長となる

Q. 現在のお仕事(活動)の内容、始めたきっかけなどを教えてください。

きっかけは上で述べましたので、やりがいについて述べますと、やはり高校生たちにセクハラ研修を行うと、「セクハラは言葉だけ知っていたけど内容をよく知らなかったのでとても役に立った」「セクハラで悩んでいる友人がいたら軽く見ないで真剣に相談にのりたい」「モッシュのような女性団体が長崎にあることが心強い」などという有り難い感想をもらいます。そんなときやりがいを感じ、これからも若い人たちを中心にセクハラ研修を続けようと思います。

Q. 座右の銘(好きな言葉)は?
理由などあれば合わせて教えてください。

「人は女に生まれない。女になるのだ。」(ボーヴォワール「第二の性」より)

1949年に書かれた本の冒頭の1行です。今ではジェンダーという言葉で表す「文化的社会的に作られた性差」のことをフランスの女性哲学者はこのように表現しました。男女平等が進んだと言われる現在ですが、70年前とあまり変わらないような気もするのです・・・。

Q. これからしたいこと(今後の目標)は?

モッシュの活動としては、スクールセクハラを防止するために、児童・生徒向けのリーフレットを長崎市内の中学生全員に配布したいと思っています。さらに、教職員が加害者にならないように教職員を対象としたスクールセクハラの研修ができないか検討中です。

Q. 後輩女性へのメッセージをお願いします!

高校生たちは「人の役に立ちたい」「みんなのためになることをしたい」と瞳を輝かせて将来のことをよく話します。社会人になると自分の仕事や人間関係で時間的にも精神的にも余裕がなくなるかもしれませんが、弱い立場の人や困っている人たちに少し目を向けて、手助けになるようなボランティアやNPOの活動に参加してもらえたら、人間として成長する、自信が持てる、仲間が増えるなど、より充実した生活になるのではと思います。モッシュに限らず、自分が思う「世のため人のため」の活動を作ったり参加したりしていただきたいです。