森田 敦子さん
(フェアトレードカフェ パオ、 つながる雑貨屋 てとて舎)

もりた あつこフェアトレードカフェ パオ、 つながる雑貨屋 てとて舎

ジャンル 起業・経営地域づくり・観光

職種 経営接客・サービス業

活動のエリア 西海市

プロフィール

1993年、フェアトレードで仕入れたアジア・アフリカ・南米の雑貨や食品と、長崎県内や沖縄の作家さんの焼き物・布ものなどを扱うお店を佐世保市で始めました。それまで15年間小学校に勤めていて、子ども達の本が800冊ほどあったので、ボランティアで「パオ子ども文庫」も併設しました。当時はまだ珍しかった自宅を開放しての「自宅ショップ」。ダイニングとリビングに子ども文庫とフェアトレードグッズ、和室に焼き物や布ものが並びました。年間7~8回、さまざまな企画も行いました。お店では、ケニア・インド・バングラデシュなどのお話会や世界の「食」をテーマに集い、地域では、アジアと等身大で出会える場として若い人たちと“アジアンライブ実行委員会”を開催したり、ゆるやかな女性のネットワーク“西海ねこじゃらし”を仲間と立ち上げて活動したりしました。小さなお店ではありましたが、力のある仲間たちの拠点となって数百人規模のイベントや本の出版などにかかわりました。

 そのうち、「畑で自分たちの食べるものを作り、なるべく自然に優しい暮らし方をしたい。お金だけに価値を見出し大量消費、使い捨てを良しとする私たちのライフスタイルが、南の国の人たちの犠牲の上に成り立っているのでは?」という気持ちが膨らみ、田舎の土地をさがしました。そして、2001年に自然豊かな西海町に越してきて、「フェアトレードカフェ パオ」をオープンしました。店としての営業とともに、原発事故後の福島の子どもたち支援やバングラデシュ、ケニアの活動報告などを合わせてのマルシェ“アースバザール パオパオ市場”などのイベントも年間2~3回取り組みました。

 そして、西海でまた新たな仲間たちと出会いました。こんなに自然の美しい、食の豊かな西海なのに、子どもたちは高校を卒業したらどんどんよそへ移り、人口減少・高齢化は止まりません。第1次産業を子どもに継がせられない現実があるのです。世界にある豊かな「北の国」と貧しい「南の国」の経済格差の南北問題が、日本の中でも都会と田舎の問題としてよく似た構造があります。女性の力で地元の魅力を発信し、活気を取り戻すことができないか、そんな思いで仲間たちと『さいかい元気村 村の菓子工房』をスタートさせました。農家さんの畑直送のみかんや卵で開発した“みかんシフォンケーキ”、季節の野菜たっぷりで卵・乳製品・小麦粉・砂糖不使用の“野菜のカリカリ”は、県の特産品新作展で奨励賞、最優秀賞をいただき、あちこちで取り上げてもらって少しずつ知名度も上がっていきました。県から3年間助成金をいただいて出発したのですが、その後は自立した経営を行い地元の女性たちが力を合わせて自前でお店を運営しています。パオとのかかわりから言えば、フェアトレードの安心なオーガニックのチョコレートやココア、紅茶などと地元食材をコラボさせたクッキーやパウンドケーキの商品開発も行っています。また、お店の一角にはセンス良くフェアトレード商品が並べられて販売されています。

 フェアトレードを佐世保で仕事として始め、西海で育てて23年がたちました(平成28年現在)。当初は考えられなかったほど、若い人たちの中にもフェアトレードに興味を持つ人たちが増えてきたのを実感しています。
2014年、西海のパオは月1回程度のイベントのみを行う場にして、佐世保市中心部に“つながる雑貨屋 てとて舎”を若い人たちとオープンさせました。「街中にフェアトレードを発信できる場を作って今までのノーハウやネットワークを次の世代に手渡していきたい。」そしてそこを入り口として、フェアトレードだけではなく、第3世界、自然環境、食の安心安全、田舎の素晴らしさなどに出会える場になっています。
 これまでたいした利益を上げることはできなかったけれど、20数年間フェアトレードを続けることができたこと、そして、なによりたくさんの仲間や人脈を作ってきたことは自慢できます。私より高いスキルを持った若い人たちがフェアトレード的スタイルで今後仕事として食べていけるように、繋いでいくことができたらと思っています。

(更新 平成28年3月)

ライフヒストリー

37歳 小学校教員を退職し、佐世保市でフェアトレードを自宅ショップで始める。
46歳 西海市に転居し“フェアトレードカフェ パオ”を始める。
52歳 “さいかい元気村 村の菓子工房”を仲間と立ち上げる。
58歳 佐世保市中心部に“つながる雑貨屋 てとて舎”をオープンする。

Q. 現在のお仕事(活動)の内容、始めたきっかけなどを教えてください。

やりがいは、自分で、または若い仲間たちと企画を立案し実行して、結果を実感できるところです。店や地域づくりの運営は厳しいこともあるけど、集客目標を達成できたり、お客様や一緒に取り組んだ仲間たちと一緒に感動を味わえるのが嬉しいです。
また、フェアトレードの分野では、アジアやアフリカなどの文化やエネルギーを感じながら、販売を通して生産者の仕事づくりにもつながり、消費者にはいいものを提供している喜びがあります。

Q. プライベート(休日)の過ごし方は?

西海の豊かな自然の中で、光や風を感じる時間が幸せな気分にさせてくれます。
暇があれば畑で野菜作りをしたり天然酵母のパンを焼いたりしています。

Q. これからしたいこと(今後の目標)は?

佐世保市の中心部にお店を出すことを決めた段階で、これまで培ってきたフェアトレードのノウハウやたくさんのネットワークを、若い世代に手渡していきたいと思って取り組んできました。私より高いスキルを持った彼女たちに“フェアトレード的スタイル”の仕事を成り立たせていってほしいので、もうしばらくは私のできるところで一緒にがんばってみようと思います。